2013年3月に観た映画



<映画館>
ジャッジ・ドレッド 3D / 悪魔の毒々モンスター / サイレント・ハウス / ゼロ・ダーク・サーティ /
マーサ、あるいはマーシー・メイ / ダークホース リア獣エイブの恋 / レ・ミゼラブル / キャビン(再) /
ジャンゴ 繋がれざる者 / 世界にひとつのプレイブック /


<映画館以外>
クリーン、シェーヴン / レッド・ステイト / パラサイト(再) / 遊星からの物体X ファースト・コンタクト /
少年は残酷な弓を射る / バーク・アンド・ヘア / バス男(再) / おとなのけんか /
ボディ・ダブル /


★印象に残ったもの
<映画館>



<映画館以外>



<映画館>
ジャッジ・ドレッド 3D】[新宿ミラノ(新宿)]
正義とは何かが判らなくなった?腑抜けたことを吐かすな、ノーラン。知りたければ教えてやろう。それは!私だ!死刑!!!(『ジャッジ・ドレッド3D』を観て・30歳・女性)
俺、もうウジウジしたヒーロー要らない…ドレッド判事がいてくれればいい…
ザ・レイド』とまる被りだし大丈夫なんかいとか思ってたけど、たいへん失礼いたしました。ぜんぜん違ったね!(観終わったあとの消耗感は同じかもしれない。ぐったり)
なんの迷いもなく、淡々と法によって裁きを下す判事が神々しすぎて…。
しかしすごいヒーローだよね、「俺が法だ!」って言い放つ、しかも公僕w(あんなにテクノロジー進化してそうなのにシステム死ぬほどアナログだし。)
仕事でやってる、ってのもカッコよさ爆発なんだな。トロールハンターのハンスも然り。
ちなみに、どうしても『ジャッジ・ドレッド 3D』は新宿ミラノで観たくて、とことこ行ってきました。ほんと、なくならないでほしいわ…


【悪魔の毒々モンスター】[新宿武蔵野館(新宿)]
素晴らしい。素晴らしいばかばかしさ。脳が腐り落ちてとろけたようだが、世界だって腐ってとろけているのだから正しい反応と言えるだろう。ほんとくだらない。誉めてます。


サイレント・ハウス[HTC(渋谷)]
……。65点くらいを期待して観に行ったら55点だった。この10点はデカい。オルセンさん家の最終兵器彼女がいなければ、かなりヤバいことになっていた。彼女をもってしても失笑してしまうシーンがいくつか。
ただ、ラストちかく最大の見せ場で見せる表情は一見の価値あり。
いちいち主人公の行動に「?」ってなるのが最大の問題。種明かしされてもほとんど腑に落ちないというか、別にあの違和感て伏線じゃなかったんだー、へー、みたいな。オープン・ウォーターの監督とのことでしたが、うーん、さすがに足引っ張られて画面からフェイドアウトとか、ポラロイドとか、やめて欲しかったよ…。たとえリメイク元にあったとしても。
いわゆる真相はまあ、普通というかそのまんまやんけというか、それは別に良いんだけど、怖くないのよね。
それより、「この人はなんでこんなに怖がってるの?」が抜けない。一応カメラはエリザベスちゃんに張り付いてて、観客の皆さんは途中から違和感を忘れて、彼女と一緒に恐怖とか憔悴とかを体験してくださいね、ってことだと思うんだけど、彼女の感情をぜんぜん追体験できないんですよ。
で、それがたぶんカメラの回り込み方だとか、やたら主人公の感情を先回りして撮りたがるカメラの動きのせいなんじゃないかな、と何となく。
エリザベス・オルセンはとても良いので、ガタガタ騒がずに彼女と呼吸を合わせてくれれば良かったのに。
下手に真相を隠そうとしてミスリード入れたりする撮影側の自己主張(?)が私にはすごく煩わしかった。
あとやっぱり登場人物たちの行動原理が甘い。心理劇的な面があるだけに、そこはまず第一に詰めて欲しかった。
長回しとかいいから。
ただ、洗面所の壁紙が、女性の顔の柄なんですよ。あれはクレイジーで良かった。ギョッとした。『黄色い壁紙』思い出したりもして。


ゼロ・ダーク・サーティ[109シネマズ(川崎)]
私、じつは今までキャスリン・ビグローってあんま好きじゃなかったんです。誤解を生みそうな言い方だけど、悪い意味で腐女子気分が抜けてなくて、なのに真面目ぶってるというか、本人すごい真面目なのがタチ悪いなーと。
だけどこの『ゼロ・ダーク・サーティ』にその気配は微塵も感じられなかった。
覚悟を決めて、そしておそらく実在の「マヤ」と自分をダブらせることで、彼女に肉薄しようとする監督の凄み。さらに、そんな監督と完全に同化しているかのようなジェシカ・チャステインの圧倒的な鋭さ。
とにかく赤がやたら目につく。そして画面に映る星条旗はことごとく何かに遮られていたり、白々しく浮いていたりする。唯一「本物らしく」見えるのは、ラストシーンの飛行機座席後ろに張り巡らされた赤いネットのみ。あれが、破れてボロボロになった星条旗に見えて、それだけが唯一のリアルな星条旗に見えるという皮肉。
あとなんだか『アタック・ザ・ブロック』を思い出してしまうのは何でだろと考えて思ったのは、あっちは神話の誕生で、こっちは神話(と思わされていたものを)をぶち殺すための話だからかな、と思ったり。取り留めもなく。
しかし素晴らしいのは、冒頭とホテル爆破に響く女性たちの悲鳴が、アジト襲撃直前に犬(狼?)の遠吠えとしてリフレインされ、アジト襲撃の大絶叫にクレッシェンドしていく演出!あれ、狙ってるんだよね?

なんでかなーと思ったんだけど、やっぱりマヤのPCの壁紙がジェシカとの写真だったこともあるし、彼女の殲滅への意志の根幹を成すものだからなのかなと。とにかく、現時点でのキャスリン・ビグローの最高傑作だと思う。

映画終わるときにはこちらもズタズタになっていて、ひとり静かに涙を流す空っぽになったマヤに、思わず「見捨つるほどの祖国はありや」と呟きたくなってしまう
帰る場所なんてもうどこにもないときづいた彼女は今、どう生きているんだろう。

今までのキャスリン・ビグローの「この泥沼の闘いに、正義なんてどこのもない」の主張には、「男同士の絆っていいよね☆」みたいなのが混じっていて、そこを無自覚にダダ漏らしていたのが私はすごい嫌で、でも今回は「そういうこと言ってる場合じゃねえんだよ!私らがやってんのは、正義なんてどこにもないテロリストとアメリカの泥試合なんだよ!それでも私は、それでも、私は怒ってるんだよ!!!」って監督自らどんどん自分を追い込んで、どこまでも自覚的であろうとした、その軌跡や緊張感こそが尊いと思ったんだ。
だから、拷問肯定なんてとんでもない。オサマ・ビン・ラディンを殺したのは、そういう泥水啜って人を嬲り殺した屍の上に築き上げた結果なんだということを、据わった目で凄まれるんだよね、この映画は。
そらまあ、アカデミー賞取れないわな。大統領夫人も出席というか、プレゼンターやるんだから。


マーサ、あるいはマーシー・メイ[シネマート(新宿)]
いやー、強風で電車遅れるし、もう間に合わないかと思って最後走ったんだけど、走って良かった!走ったかいありすぎる良作だった。
音が神経に障るあの演出だけでもうウットリできるよー。オススメ。
過去と現在が意図的に無作為に(って変な表現だわ)繋がれているため、時系列が曖昧になり、耳障りに大きな音、微かにゆれるカメラ。始めのうちはただ不快なだけの正体不明の不安が段々と正体を現し牙を剥く、そのスリリングかつ不愉快なこと!
エリザベス・オルセンの無造作なようでいて神経症的な演技も大したもんでした。すごいの出てきたねー、という感じ。
音楽もなかなか素晴らしくって、あの神経が軋んでいるときに聞こえるキュルキュルキュル…という音をうまい具合にノイズ半分音楽半分のトラックにのせて再現していて、ものすごく精神を削られます。
この映画はカルトで傷つけられた精神がどう回復するのかなんてことはハナから興味がない。どっちかっていうとアロノフスキーの実験に近い。こちらは、彼女がじくじくと病んでいくのを見守るしかない。で、あーいやな映画だなーとか思って最後まで観ると、まさかの!そんな不穏な幕切れなのー!ぎょえー!
とてもおすすめであります。この監督の名前は覚えとくといい。ショーン・ダーキンさんでした。脚本もねー。サーチライトは面白い作品おおい気がします


【ダークホース リア獣エイブの恋】[HTC(渋谷)]
相変わらずというか、磨きがかかったというか…もう、わけわからん…。え、もしかしてすべてはあの事務のおばさんの…?いやいやい、それはないんだけど。ないんだけど。わけわかんない。けど面白かった。けどなんというか、辛い…。勝手に穴馬認定されたけどけっきょく駄馬で廃馬になって、それを監督が撃ってやる(やる?)話ですよね…もうどうしたらいいの。
エイブの完成されたどうしようもなさと、彼がもつ賢明さのせいで常に覚醒していなければならない痛みと、ある意味での(うああ、こう言わざるをするを得ないこと自体の残酷さ!)純粋さと、そのバランスを完無視する事務のおばさんの妄想と。混乱してます。主題歌の凄まじく明朗な意図も、意地が悪すぎて気を失いそう。
でも悪意じゃないんだよなぁ。


レ・ミゼラブル[TOHOシネマズ(渋谷)]
退屈はしなかったけど、面白かったかと言われるととても平板な印象しか残ってない。特に騎兵隊とぶつかるシーンの盛り上がらなさは頂けない。役者さんに拍手を送る映画(ジャベールは申し訳ないが除く)


【ジャンゴ 繋がれざる者】[シネパレス(渋谷)]
・すごいすごい!ちょーおもしろかった!まざふぁか!まざふぁか!! (*>∀<)ノ))★さいこー!!
・タラさんはおいしいとこ持ってってずるい。
・当時の巡業歯医者って、みんな馬車にああいう看板つけてたの?びよびよびよびよ、動くのめっちゃかわいいんですけど。しかも小物入れ機能まで搭載!あの歯の馬車レプリカほしい!!
・ヴァルツさんに例の歌を鼻ずさませるあたり、悪ふざけすぎる。
・あとKKK(風)軍団のアホ会話最高。画面映った瞬間、「この人らこれでよく馬に乗れるな?」と思ったら見えてなかったという。
・そして、何より『ジャンゴ』の素晴らしいのは、2人が馬を駆って観客に背を向けた、あの瞬間。「ああ、映画観たな」って心底から思うの。そんな風に思う映画は、本当に素晴らしいのです。最高!!!!
・しかしこれでヴァルツさんがアカデミー助演獲って、デカプーはノミネートすらなしってのは流石にあんまりではないかと思ったよ。


世界にひとつのプレイブック[TOHOシネマズシャンテ(有楽町)]
苦しみの発端を描くのではなく、躁気味にギリギリ世界と対峙する姿の隙間から溢れるように覗く心の足掻きを掬い取るのがとても良かった。
足掻けば足掻くほど滑稽に映ってしまうようなパットの痛みを、背景にパットより長いあいだ闘っていたティファニーの孤独と強靭さを映し込むことによって、なんとか物語の危ういバランスを保ってるような映画でした。
しかしまあ、彼らの狂おしいまでの悲しみに共鳴してしまうと、なんともしんどい。疲れてる人はゆっくりできるときに観たほうがいいかも。あと、こういう心の襞が擦れて痛いっていう感覚を肌で知らない人とは一緒に観ないほうがいい。それくらい繊細でした。画は裏腹に凄い勢いで寄ってくるんだけどね。(あのカメラが急激にすごい近いとこまで接近してくる感じは、あの手の病に苦しむ人間特有の距離感とも言えるなとも思いました。)


そういえば、『世界にひとつのプレイブック』でジェニファー・ローレンスが主演女優賞を獲ったことについて長谷川町蔵さんは「彼女は“助演”女優賞」と言っていたけど、今日わたしが観たかんじだと主演で良いんじゃないかなあと思った。
だって 主人公はパットだけじゃない。
パットより孤独な闘いを続けてたステファニーがいて、彼女はもうそろそろ駄目になりそうで、それでもパットの「運命」として彼に「手を差し伸べ」続けて、その闘いに勝利したのだから。ステファニーの闘いがあって、その闘いがパットの闘いと出会って共鳴する。だから、助演ではないと思う。
正直いま疲れはてているのでふろにも入らず眠りたい。チクチクされてしまった。ステファニーみたいな人をみるたび、わたしもやらなきゃと思う。闘わなきゃ。




<映画館以外>
【クリーン、シェーヴン】[VHS]
傑作すぎて完全にぐったり。いやな所を刺激される。私の厭気スイッチを押さないでください。すごい元気だったのに吐き気で満ちておるよ。しかし面白かった。傑作。ビデオの最後に「字幕 柳下毅一郎」って出てきてのけぞった。


レッド・ステイト[DVD]
面白かった!ケヴィン・スミスの得意分野がぜんぶ集結して、わけわからんことになってる(褒め言葉)。
真面目な問題提起してるのかと思わせといて、ボンクラ基盤は維持したまま。特に警官とカルト教団の銃撃戦という展開になってからは、感情移入したものが5分後には覆るという。
もう、要約したら「世界に意味のあるものなんかないよーだ」に落ち着いちゃうんじゃないかという勢い。まさに人を喰った展開が非っっっ常に素晴らしく、かつ面白かったです。
ケヴィン・スミスの長ゼリフは時に欠点ともなるんだけど、カルトの胡散臭い説教との相性は抜群。宗教批判や銃批判しながらも、「…そんな真面目な話かコレ?w」って笑っちゃう思わせる手腕は『ドグマ』の頃から比べると洗練されまくってる。しかしラストシーンの意地悪さやひねくれ具合は相変わらず。暗澹たる気持ちになってたのに、そんなシリアスな自分に爆笑してしまった。
これ、Nのシッチェス祭りで上映してたんだよね…這ってでも行けばよかった(´・ω・`)後悔してもしきれない…。ていうか、ケヴィン・スミス、映画やめるってよな宣言は撤回してほしいなぁ。傑作といえば傑作、そうでもないかと言えばそうでもない、みたいなの撮り続けてくれ。
しかしまぁ、カルトの理屈がここ数年の日本でも実際にどこかで聞いたことあるセリフばかりなのには苦笑しました。いや、カルトが言ってるならまだしも、それなりに地位のあるやつが言ってんだもんなぁ。笑えねーよ。特定の人に向かってヘイトをぶつける奴らが武装したら、ほんと怖い。なにも弱小思想団体にかぎりませんよ。ことによっては、政府という組織がそうなる可能性が多分にあるわけで。(げんに映画の中ではそんなシーンもありましたしね)


遊星からの物体X ファースト・コンタクト】[DVD]
前日譚として破綻はなく、その意味では『プロメテウス』よりは幸せといえるのかもしれないのだけど、ただひたすら正史と過不足なく整合性が取れていればプリクエルとして面白いかと言うとそうではなく。
疑心暗鬼になる間もなくThe Thingが暴れまくってしまうものだから、ただのモンスター映画と化してしまっている。
しかも本家の範囲から逸脱できないもんだから、モンスター映画としてはっちゃけるわけでもなくひたすらに予想のつく範囲でおとなしくリスペクトシテいるだけなのである。
「で?」と言いたくなるような凡庸さが致命的。
せめて主人公のラストカットはもう少しくらいいやな感じにしてくれればいいのに。


少年は残酷な弓を射る[DVD]
傑作。女性が母親になるということへの生理的恐怖や社会的面倒くささなどが丁寧に真面目に描かれていた。よくぞ言ってくれた!みたいのはないので、それが余計に良い。あまたいる妊婦の中で、ひとりだけ髪の短いエヴァ。これですべてを物語っていると思った。
でも、この映画について、詳細に語ることは避けたいとも思いました。それは、私だけが知っていればいいことなので。


【バーク・アンド・ヘア】[DVDスルー]
人間のどうしようもなさを深刻にならずに描いていて傑作。平然と軽やかに。過不足なく。音楽も最高。